83歳入居者殺人事件|なぜ介護士は殺人を犯したのか。老人ホームの光と影
こんにちは、現役介護士のさかもと ままる@mamaru0911です。
今年8月、東京中野区の介護施設「ニチイホーム鷺宮」で。現役介護士による入居者さん(83歳)殺害、という痛ましい事件が起こりました。
83歳入居者殺害容疑で老人ホーム元職員逮捕 | 読売新聞 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
殺害が行われたのは、早朝の4時代のこと。
夜勤の時間帯です。
夜勤専従介護士として働く僕にとっては、非常にショックな事件でした。
今日はこの事件について掘り下げます。
25歳の介護士はなぜ入居者さんを殺したのか
介護付き有料介護施設(有料老人ホーム)で利用者さんを殺害した疑いで逮捕されたのは、皆川久容疑者(25歳)。
報道によると彼の介護歴は3年半、そのうち1年2カ月は同施設に勤務していたということなので、介護職にまったく慣れていなかったという訳では無さそうです。
皆川容疑者の犯行の動機は、その入居者さんが何度も失禁しその度に衣類や布団を汚した為、カッとなって殺害。
その後浴室に遺体を運び、浴室での事故に見せかけた、というものでした。
もちろん介護士として、あるまじき行為であり厳重な処罰が求められるのも事実です。
しかし僕はこの報道を見て、一つの違和感を覚えました。
夜勤専従介護士だから分かること
犯行の行われた「ニチイホーム鷺宮」は、定員70床の有料老人ホームです。
僕が夜勤専従、派遣介護士として働いている施設と同じ規模です。
報道によると、殺害が行われた当時、施設内には「2名」の介護士しかいなかったということです。
通常、70床規模の有料老人ホームでは最低「3名」の介護士で、夜勤を回すのが当たり前です。
介護士ひとりが20名〜25名程度を受け持つのが一般的です。
しかし実際は定員が70床でも、満床であるとも限りません。
報道による「ニチイホーム鷺宮」の外観は4階建てに見えます。
仮に適正人数で夜勤を二名で回していたということになると、ワンフロアーまるまる未入居という状態ということになります。
都内の有料老人ホームで、仮にそのような状態であったとしたらそれは経営的に非常に危機的な状況にあったはずで、なかなか考え憎いと言わざるを得ません。
あくまで僕の推測ですが、殺人のあったこの老人ホームは、圧倒的な人手不足だったのでは無いでしょうか?
夜勤介護現場のリアル
仮に、今僕が夜勤専従で働く施設(70床程度)の夜勤を2名の介護士で回す事が出来るかを考えた時、出て来る答えは「絶対に不可能」です。
もちろんその施設ごとに、入居者さんの介護ども違うので一概には言えませんが、70床の介護施設で夜勤介護士2名という人員は、圧倒的におかしいのです。
介護施設の夜勤の仕事は、通常17時〜翌朝10時までの16時間にも及ぶ長丁場です。
その間、1時間〜2時間程度の休憩がありますが、70床の施設を2名の介護士で見た場合、一人が休憩中は残された一人が、70名の入居者を見なくてはいけないという物理的に不可能な時間帯が出来てしまいます。
あくまでも報道の一部からの推測ですが、この事件のあった施設にはこういった構造的な欠陥があったのでは無いかと疑ってしまいます。
終わりなき介護職
介護の仕事に終わりはありません。
人間が生きていく事を手助けするのが仕事ですから、当たり前のことです。
起床すれば着替えが必要ですし、食事をすれば口腔ケアが必要です。
排泄は一日に何度もあって当たり前で、その度に介助が必要な方も沢山います。
その終わりなき無限ループを、介助し続けるのが介護士の役目です。
しかし、介護士も一人の人間です。
物理的に不可能な人数の介護は、不可能なのです。
今回の入居者殺人事件の犯人は、介護士として人として、決してしてはいけない事をしてしまいました。
全く以て彼を養護する訳ではありませんが、残念ながら現在の日本には、人手不足も関わる「構造的な」欠陥のある介護施設が多数存在していると僕は思います。
派遣介護士が日本の介護を救う理由
僕はこのサイトを通じて「派遣介護士になろうよ」と何度も言い続けています。
その理由は、派遣介護士の方が常勤(正社員)よりも実入りがいいからです。
せっかく介護の道に進んでも、その給料の低さに業界を離れていく人も少なくありません。
少なくとも、僕の働く派遣会社では比較的簡単に手取り月収で30万円近くを手にする事が可能です。
僕が働く優良派遣会社はこちら↓↓
「世の中の介護施設が、派遣介護士だらけになっては困る」
という意見もあるかも知れません。
しかし派遣介護士が増える事で、常勤介護士が少しでも休める環境が出来ます。
介護士全体の給料を上げれば、介護士が増えるという意見も多いですが、それは現実的ではなく、さらに早急に実現されるものでも能動的に勝ち取れるものでもありません。
「国が介護士の待遇を上げればいいんだ」
と愚痴をこぼしているだけでは、現状は何も変わらないのです。
だとしたら、派遣でも介護業界にひとりでも人が増えれば、介護業界全体の力に少しでも成るはずです。
まとめ
世間では「介護殺人」の報道が、残念ながら度々出て来ます。
それはもちろん、その犯罪を犯した人間が悪い事です。
しかしそれらは全く人ごとではなく、介護業界全体、もしくは日本全体の問題でもあるのです。
業界全体が今のままでは、この事件の様な痛ましい事件が、今後も増え続ける恐れもあります。
一方で僕の働く派遣会社のように、優良な施設ばかりを仕事先に選ぶ事も可能です。
いわゆる「ブラック施設」で働く事になってしまった人は、それだけでも被害者だと思います。
介護関連のニュースは、本当に暗いニュースが多いです。
しかしそれだけではなく、日々明るく楽しい介護現場も沢山あります。
是非介護職に興味のある方は「優良」な職場を選んで欲しいと、切に願うばかりです。